一般不妊症の治療のポイント
卵がちゃんと育って、精子がちゃんと入口に入っていくのを確認する。これが一般不妊治療の基本です。
これを何回もタイミングを合わせてみると、何割かのカップルが妊娠していきます。 ポイントは、排卵モニターとヒューナーテスト。 武器として、子宮鏡と人工授精が使えます。
A 排卵モニター ~排卵誘発剤の使い方~
卵胞がちゃんと育つ人は、本来、排卵誘発剤など不要のはずです。ところが、不妊の方というのは毎周期卵ができている人は少なく、たいてい卵胞が育たない周期がでてきて、排卵誘発剤が登場してきます。
経口の排卵誘発剤(飲み薬)
セキソビット
一日4~6錠も飲むのに、効果はクロミフェンの1錠以下です。しかし、この薬の最大のメリットは「頚管粘液が少なくなったり、子宮内膜が薄くなるという副作用がない」ところにあります。
多少なりとも卵胞発育に貢献するため、軽度の不妊症の方には使いやすいお薬です。
クロミフェン
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方や、生理が全然来ない方には第一選択薬となります。卵胞がしっかりと大きくなる力強いお薬です。
【注意点】 頚管粘液が少なくなったり、内膜を薄くしたりする副作用(くせ)があります。これによりヒューナーテストが不良になる場合があるため、タイミングが合わせづらいお薬でもあります。
クロミフェン使用時の当院の工夫
クロミフェンを使った時には、卵胞の大きさだけでなく、頚管粘液とLHサージ(尿で測定できます)にも着目します。LHサージが期待できない時は「フレアアップ」という方法を用います。
ヒューナーテストが良好な場合は辛抱強くタイミングを合わせますが、不良例ではHMG注射を追加したり、人工授精に切り替えたりします。(HMGを追加してもそこまで改善しないため、人工授精をした方がスムーズなことが多いです。)クロミフェンが効きにくい場合(PCOSなど)、10日間使用してみたり、温経湯(漢方薬)やメトホルミン(糖尿病治療薬)と組み合わせるなど、下垂体を揺さぶってホルモンを出させるバリエーションを持たせています。また、フェマーラ(レトロゾル)を使用することもあります。
注射による排卵誘発(HMG / FSH)
タイミング法でHMG注射を初期から使うことは滅多にしておりません。使うなら、最初クロミフェンでいって、途中からHMG注射でアシストします。HMGも今は組み換えDNAのフォリスチムという薬にかわりつつあります。しかし、フォリスチムをもってしても卵胞数のコントロールが極めて難しく、体外受精でコントロールしないと多胎になってしまうことがあります。
下垂体や卵巣の働きが悪い場合への対応
下垂体の働きが悪い人は、FSHやHMGという注射を打ちます。これで卵胞が育ってくれるならば、体外受精をはじめとして有効な手段があります。
やっかいなのは「早発閉経」という状態で、これは卵巣が老化してしまったためにおこります。こうなると「若返り」を図らなければなりません。
- 漢方薬の八味地黄丸を地道に続ける。
- DHEAというサプリメント・薬に頼る。
- ピルを飲んで高いFSHを一度下げ、卵巣を休ませてから改めて大量のFSHを打つ。
B 子宮鏡・卵管鏡を利用した治療
子宮鏡検査
膣の方から子宮の入り口を通して、子宮腔内に直径3mmの非常に細い内視鏡をいれ、水を流して膨らませながら子宮腔を観察する検査です。 また、器具を挿入して卵管口に色素を注入したり、ポリープを除いたりできます。
【当院の工夫:無痛検査】
無麻酔で行うと、緊張して子宮内腔が狭まり検査不能になることがあります。当院では原則的に全例、プロポフォールという静脈麻酔を厳重管理で行い、痛みなく施行しています。卵管鏡下卵管形成術(FT)
子宮鏡によく似たさらに細い内視鏡です。カテーテル先端のバルーンで卵管内腔を押し広げ、前進させることで、卵管内腔の観察と卵管通過性の回復を図ります。透視や造影剤を使用しないため、より体への負担が少ない治療です。
【当院での日帰り手術が可能に】
平成22年4月より施設基準が認定され、当院外来にて静脈麻酔下での日帰り手術を行っております。高額治療ですが保険が適用されます。 開通率は70-80%、術後の自然妊娠率は約35%です。C 人工授精 (AIH)
男性から射精された精子を、細いチューブを使って子宮腔内に入れることを人工授精(IUI = Intra Uterine Insemination)といいます。 一般的には、夫の精子を使用するAIHを指します。 ※AID(提供者の精子を使用)は現在東海3県で行っている施設が少なく、当院では実施しておりません。
対象となる方
- 精子濃度が少ない方
- 精子の運動性が悪い方
- 精液量が少ない方
- 逆行性射精の方
- 勃起不全等で夫婦生活が困難だが、マスターベーションでは射精できる方
洗浄濃縮について
精液中の雑菌による卵管感染を防ぐため、洗浄した精液を用いた人工授精を行っています。 精液を30分放置後、比重の重い溶液の中で遠心分離させて良好な(重い)精子だけを集め、卵管組成液で洗ったものを使用します。良い精子が得られると、やはり妊娠率は高くなります。
精液の採取・調整スケジュールについて
当院では、患者様のご都合に合わせて二通りの対応をしております。
D 腹腔鏡検査・手術
全身麻酔をかけておへその下から非常に細いカメラを入れて、お腹の中を調べる検査・手術です。癒着をはがしたり、卵巣嚢腫・子宮筋腫の核出術、卵管開口術などを行うことができます。 日帰りは安全上難しいため、当院の提携病院にて2泊3日の退院を可能にして実施いたします。
不妊症における主な適応
- 子宮内膜症またはその疑いがある場合
- 子宮卵管造影で異常があった場合(閉塞、癒着、奇形)
- 骨盤感染症の診断(急性期を除く)
- 多嚢胞性卵巣症候群の治療
- 原発性無月経または早期閉経症の卵巣生検
- 原因不明不妊症(機能性不妊症)
- 長期不妊症
- 卵巣嚢腫
- 子宮筋腫
経膣的腹腔鏡(THL)について
最近は、より負担の少ない経膣的腹腔鏡(THL)という日帰り可能な手法もあり、当院でも導入を検討しております。