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2008-11

当院の体外受精の特徴 その③ 成績

当院の体外受精の成績、といってもまだ開院前なので、今までの成績を披露するしかありません。わたくしたちのスタッフは、チームを岐阜で組んでからまだ一年しか経っていません。12月の終わりに一年間の統計を出しますので、今しばらくお待ちください。

院長が、三重県のクリニックでしていた成績より随分進歩しているのは確かです。わたしたちの現在の妊娠率は、感覚的な表現を使うならば、「20代、30代は精子さえ普通ならば、基本的には2回以内の体外受精で妊娠して当たり前。40代は、採卵数が確保できれば妊娠は可能だけど、質のよい卵になかなか出会えないから妊娠率は随分悪い」と言ったものです。卵巣年齢が35歳くらいまでならば、注射を採卵前に8回くらい使って刺激する方法で、10個くらいは採れます。そうしたら、3個~5個くらいは胚まで育ち、それを戻せば妊娠する割合は50%は絶対越しています。もちろん、いくつかの工夫はしています。卵巣刺激の仕方、注射の量、採卵の仕方、受精のさせ方、胚の育て方、胚移植の仕方、黄体管理など、いろいろなART専門クリニックから吸収してきた(盗んできた?)方法を織り交ぜ、自分たちで工夫して、「これなら、妊娠する」という方法を加えて、ほぼ完成したレシピです。自分たちの工夫の部分は、実はなんでもないのかも知れませんが、今のところ、門外不出のところにしています。

要するに、体外受精というものは、よい精子とよい卵子があれば、よい胚ができるものなのです。出生前診断をしていない胚なので、一見綺麗に見えていても育つとは限りません。でも、それを適正に扱えば、結構妊娠してくれるのです。適正に扱わなければ妊娠しません。そこの所は、高い妊娠率を出しているART専門クリニックに勤務して何百かの症例を検討していれば吸収でき、自分の責任でやってみてその数は少数ですが、確かに成果が得られた、と感じました。適正に扱っているART施設がすべてとは思えません。「胚を捨ててくるように胚移植するところ」とか「乱暴に卵を扱うところ」では妊娠率は10~20%に低迷します。これを「なんちゃってART」と称している先生もいました。

学会発表をするART施設では、概ね、わたしたちが感じている妊娠率の感覚を持っているのでは、と思います。数字で出すのは、困難です。年齢別といっても、卵巣年齢はばらばらです。胚移植あたりの妊娠率より、一回の採卵あたりの妊娠率の方が実用的だとは思いますが、それでも、いくつ卵がとれ、そのうちいくつから良い胚ができて、最終的にいくつ卵を戻し、いくつ凍結ができたのかが分からなければ、比較が困難です。さらに男性因子も加味しないと正確な比較が困難です。比較的わかりやすいのは、40代の患者さん(つまり卵の質が悪く、数も少ないのが一般的)の成績でしょう。不利な条件で、どのくらいな成績がでているかが、そのクリニックの腕を見るのによいからです。それでも、採卵回数などを隠して発表している施設も多くみられます。20代は、男性因子から体外受精になっている例が多く、30代より、いくぶん成績が悪い施設もあるはずです。色々な施設が、自分の都合のよい(全国の成績よりよい数字の)妊娠率を掲げていますが、それを見て、受診施設を決めるのは、結構難しいのでは、と思います。

わたしたちのクリニックも、早く症例数を積み、正直なデータを出して、みなさんの意見を頂戴したいと思っています。

 

当院の体外受精の特徴 その② 時間

数年前、いくつかの有名なART施設を見学させていただいたことがあります。共通していたのは、朝8時くらいから採卵する、ということです。実は、これは、採卵前に打つ注射の時間に関係があります。コントロールされた周期では、GnRHa周期であろうと、antagonisit周期であろうと、HCGの注射を35~36時間前に打ちます。午前8時の35時間前は、前々日の午後9時です。もし、午後1時採卵にすると、前日の午前2時になってしまいます。これは、ビル診療では不可能な話で、患者さんも迷惑です。そこで、朝の採卵となっているようです。クロミフェン周期でよく使われるフレアアップという方法を用いると注射の必要がありませんが、これも時間は同じですから、似たような事情で、クロミフェン周期でも朝採卵となっているのでしょう。

しかし、仕事をもつ患者さんの立場になって考えてみると、朝早くからクリニックに行かなければなりません。旦那さんも出勤前に慌しく精子提供です。採卵に静脈麻酔を用いると、午後から仕事がやっとです。局所麻酔も止血原理(採卵では卵巣表面の止血は自然止血なのです)は一緒ですから、本来何時間かは寝ていた方が無難でしょう。

そう考えると、仕事後に採卵するパターンがあってもよいのでは、と考えました。また、当院は、「1人の患者さんに対し集中したい」「卵や精子の取り違えを物理的にゼロにしたい」「最高の医師と最高の培養士の組み合わせは施設あたり一組しかいない」という考えから、時間帯あたりの採卵・胚移植を1人に限定しています。

そこで、当院の体外受精の特徴は、フレキシブルな時間としました。つまり、

朝8時半からの採卵・胚移植、午後1時からの採卵・胚移植、午後4時からの採卵・胚移植、午後8時からの採卵・胚移植の4通りのパターンが可能です。

午後8時からの採卵の場合、ご夫婦とも通常のご勤務を終えてから来院していただいてO.K.です。採卵が終わって眠っていらっしゃる奥様にずっと付き添ってご一緒にお帰りください。

午後8時から採卵するためには、HCGの注射は前日の午前9時に行います。静脈麻酔を受けられると午後11時くらいにクリニックを出ることになりますが、たとえお1人で帰られることになっても近鉄四日市駅前徒歩2分の距離ですから問題ありません。近鉄も長距離バスも動いていますし、タクシーもすぐつかまえられます。当院の胚培養士は、夜型人間で、媒精作業が午前様になっても最高のコンデションで行えます(翌日は午後出勤です)ので、この時間帯での採卵が実現しました。

ついでですが、外来も午後8時まで受付していますので、注射も勤務終了後にきていただけます。

当院の体外受精の特徴 その① 価格

現在、日本には約600の日本産科婦人科学会の体外受精登録施設(ART認定施設)が存在します。

当院も、内装工事が完了したら、早速、認定申請をする予定です。なぜ、認定申請をするのかというと、各自治体の生殖医療治療費補助制度を受けるためには、患者さんが受けている体外受精をしている病院・クリニックが、ART認定施設でないといけないのです。2回受けると、年間20万円の補助額になります。これは、保健医療となっていないARTでは、見逃せない額です。

さて皆さん、ARTは高い、と思っていらっしゃいますよね。私が在籍していた頃の東京の値段ですが、1回受けると総額70~80万円に達することがあります。採卵して胚移植までの料金は45万円くらいと標榜しておりますが、その前後の検査代・注射代・投薬代を含めると、結局そのくらいかかってしまうというわけです。注射をあまり、使わない方式は、それよりも安くなるのですが、1回あたりの採卵数が少ないので、採卵そのものの回数が増えてしまい、妊娠するまでにかかる費用は、結局高くなってしまうことも十分考えられます。

「子供が授かる」というのは、医療機関にかからず自然にできた場合は、費用ゼロですから、費用がかかる不妊治療というのは、不公平と言えば不公平です。不妊症」自体は、病気と認定され、保険治療の対象となりますが、「体外受精」は保険適用になりませんので、とりわけ、不公平ではあります。なぜ、保険適応にならないか、はここで議論しません。とにかくこれが現実だとして、いくらまでなら、皆さんは、子供を授かるまでにお金を出してよい、と考えていらっしゃいますか?受ける患者さんは、せいぜい40代までの患者さんで貯蓄はあまり余裕がなく、しかも、この不況、あまり出せないだろうと、わたしたちは考えています。

 

わたしたちも、できるだけ、良心的な価格を設定したいと考えています。

おおざっぱに考えると、体外受精というものの値段は、以下の図式が基本ではないでしょうか?

(施設費用÷利用人数)+(試薬代・使い捨て器具代)+((人件費・運営費)÷利用人数)+経営者の利益

例えば、施設費用を3000万円(五年償却)、人件費(培養士+看護師+事務)・運営費を年間1000万円、利用人数を年間100人、試薬代・使い捨て器具代を4万円とします。3000万円施設費用をかけると、エアシャワー・クラス10000クラスの培養室・クラス100クラスのクリンベンチでの顕微授精・レーザーアシストハッチング・IMSIなどが実現できます。当院も、このクラスの設備を揃えています。設備というのは、手を抜けば、この半額でも顕微授精まで十分にできます。それでも、ART認定施設のすべて対応施設(体外○顕微○凍結○)です。昔に登録された有名でない施設は、たいてい清潔度のレベルが落ちます。HPをみて設備内容が分からなければ、そこまでかけられていないと判断してもよいのかな、と思います。

そうすると、

(600万÷100)+4万+(1000万÷100)+経営者の利益=20万+α となります。

実際には、これに注射代・くすり代・検査代が入ります。これもやり方によって費用はだいぶ変わってきます。なるべく最小限の費用で保険治療に換算すると5万くらい、ちょっと丁寧にやると、7万くらいかな、と思います。

これが、利用人数200人でも、人件費・運営費は2倍とはならず、せいぜい2人くらい(月30万x12x2=720万円)増えるだけですから、

(600万÷200)+4万+(1720万÷200)+経営者の利益=15.6万+α です。

そこで、当院の体外受精の特徴の一番を、「きちんとした体外受精・顕微授精をリーズナブルな値段」で受けられる、ということにしました。わたしたちが考えたのは、以下の料金設定です。

longGnRHa周期  トータル30万円くらい!    クロミフェン周期     トータル20万円くらい!

 

トータルというのは、投薬代・注射代・検査代を含めた価格です。また、凍結に関しては勘定に入れていません。凍結に関してのわたしたちの考えては、別の機会に書きます。100人の患者さんが体外受精を受けてくれないと、経営者の儲けゼロどころか下手すると赤字、200人来てくれたら、1人5万円の利益として、1000万円利益がでますよ、ということです。実際には、運転資金の借入には利子が発生しますし、利益がでたら税金も払わなければなりませんし、一方、減価償却費という概念も発生するので、こんな簡単な計算ではすみません。けれど、概念的に、「ぎりぎりの価格である」ということをご納得いただけたら、と思います。

当初、これでスタートして何年かやってみて、経営の収支で、また料金設定を変えるかもしれません。わたしたちとしては、さらに良心的な価格でご提供できることを望んでいます。

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